次に、別れた後の両者の距離について考えてみます。一般的に「空の巣」では、親子の距離が物理的に開いても両者は連絡を取り合ったり、時々会ったりすることができます。もちろん、どちらかが本人や家族の意思で関係を切りたいと考えている場合は別ですが、結婚や就職などの別れでも、近くに住んでいたりする場合は、頻繁に会ったりすることができます。また、子どもの居所が海外になった場合でも、連絡を取り合うことにより情報を共有することもできます。さらに、子どもの離婚や転職などによって、再びもとの家族構成に戻ることもよくあることです。つまり、「空の巣」では、物理的距離は離れても、心理的距離は近い場合が多いと言えます。
一方、里親の喪失感を考えたとき、家庭復帰による措置解除や施設への措置変更の多くのケースで、里親子の関係は物理的にも心理的にも途絶えてしまいます。里親側には子どもの新しい居場所や連絡先の情報が入らないため、関係を継続することができません。一般的に、里親の居所と子どもの新しい居場所はかなり離れているため、子どもの側から連絡を取ったり会いに行くことも難しいケースが多いです。このため、一般的な家庭引き取りと施設入所ケースの場合、別れた里親子はその後のお互いの人生で再び交わることがないのが現状です。
935 里親の喪失感を考える③
・・・里山の季節の移り変わりや里親として感じていることなど