母は,ありがたいことに長寿で,90歳代半ばを迎え高齢者施設で暮らしています。
「昔,こんなに怒られた」と話したら,「お前はいたずら坊だったから」と言われたことがありました。
子育てにあまりかかわってこなかった父には,特に尊敬する部分も感じてきませんでした。
けれども最後の最後に私に一生分の教えを残してくれました。
15年ほど前に病気で亡くなりました。
入退院を繰り返しながら最期が近くなっていきました。
担当医の「かなりつらいはず」という言葉とは違い,病室ではいつも明るく振る舞いました。
毎日のように勤務を終えて病室に行くと「大丈夫だよ,仕事があるだろうから早く帰っていいよ」の連続でした。
意思疎通のできた最後の2回だけ「もう少し居てくれ」と求められました。
「痛い」「辛い」「寂しい」など一度も口にせずに亡くなりました。
「男はこのように死んでいくんだ」と教えられたと感じました。
自分には,そうできる自信はありません。
相談員の仕事を重ねてきたいま思うことがあります。
「痛い」「辛い」「寂しい」を口にさせて聞いてあげられればよかった。
身勝手な話題を綴り失礼しました。